ぼくらの家ラボ

構造・性能

2020.05.10

屋根裏の「換気と通気」の抜け道にご用心

小屋裏の有効利用を考えているんだ。
収納スペースとして使いたいんだけど。

屋根断熱がおすすめニャ。
それに夏の暑さ対策や結露対策にもなるニャよ。
ただ、二重屋根通気工法が採用されているなど、屋根通気がきちんと取られていることが条件ニャ。

夏場の小屋裏温度は60℃や70℃まで上昇すると言われているそうです。
外気温よりも暑くなってしまうんですね。
また、室温の話だけではなく、夜になって小屋裏温度が低下して、空気中に含まれていた水分が放出されると、木材や断熱材に内部結露が発生することもあるようです。

そこで、今回は小屋裏換気や屋根通気についてご紹介したいと思います。

小屋裏とは?

一戸建て住宅の屋根裏空間のこと

まず、小屋裏(こやうら)について、ご説明しますね。
小屋裏とは、一戸建て住宅の屋根材を支える野地板(のじいた)と天井に囲まれた半室内空間のことです。
屋根裏ともいいます。

夏場の小屋裏は熱がこもる

小屋裏換気をすることで、温度上昇を抑制し、湿気を逃がす

夏場の小屋裏温度は60℃や70℃まで上昇すると言われています。
小屋裏に熱がこもり高温になると、室内の温度上昇は避けられません。
また、夜になって小屋裏温度が低下し、空気中に含まれていた水分が放出され、木材や断熱材に内部結露が発生すると、カビや腐朽の原因となります。

そのため、「小屋裏換気」をすることで、小屋裏の温度上昇を抑制し、湿気を逃がすことが必要なのです。

小屋裏換気の実情

やや軽視されている傾向にある

「小屋組材の劣化の軽減」をはかるための措置として、品確法の住宅性能表示やフラット35では「小屋裏換気」について規定が明確化されています。
しかし、建築基準法には規定がなく違法にはなりません。

耐久性に関わる小屋裏換気について、やや軽視されているのが実情だと思います。

屋根断熱という方法

小屋裏空間からの輻射熱の影響を受けにくくなる

建物の上部の断熱ですが、屋根を断熱すれば屋根断熱、天井を断熱すれば天井断熱となります。
屋根断熱を採用することで、屋根裏空間が室内と同じ環境になり、天井断熱の様に『小屋裏空間からの影響』を受けにくくなります。

屋根断熱は天井断熱より施工面積が広くなったり、手間もかかるので、一般的にコストが高くなる傾向にあります。

屋根断熱の抜け道

小屋裏換気基準の省略規定がある

ただ、屋根断熱には抜け道があります。

木造住宅工事仕様書(マニュアルのようなもの)によると、屋根断熱を採用した場合、小屋裏換気孔は要さないとされます。
つまり、小屋裏換気基準の省略規定があるのです。

ただ、耐久性上支障がでないよう、断熱材の外側には通気層を設けるなどという記述がありますが、それも義務ではなく「望まれる」という表現にとどまっています。

屋根断熱であっても「通気」は必要

屋根断熱であっても外壁と同じように、通気層を設けて空気を流すこと

外壁の通気層は、今や当たり前のように取られていますが、屋根はそうではない場合があります。
屋根は日光や雨の影響を強く受ける、過酷な環境に晒されていますので、なおのこと通気が重要です。

そのため、屋根断熱であっても外壁と同じように、通気層を設けて空気を流してあげる必要があります。

通常の屋根通気は?

屋根形状が複雑な場合、通気層の確保が難しい

屋根通気を取る場合、野地板を支える垂木(たるき)の間に通気層保持材を施工して、通気層を確保する方法が一般的です。
しかし、寄棟屋根(よせむねやね)など屋根形状が複雑な場合、隅棟(すみむね)で通気が止まらないよう、隙間を設けたり専用の換気材を使用しないと、空気の流れが妨げられてしまいます。

閉塞された通気層は、ただの「空気層」になってしまい、その役割を果たせなくなるのです。

確実な屋根通気の方法

二重屋根通気工法なら十分な通気量を確保できる

確実に屋根通気を取る方法として「二重屋根通気工法」があります。
二重屋根通気工法は、通常、設けられる垂木と野地板の上に、さらに垂木と野地板を張って屋根を仕上げる工法です。

二枚の野地板による空間が、屋根部分の熱や湿気を逃がす通気層となります。

ただ、二回も屋根を作らないといけませんので、手間もかかりますし、材料も二倍必要です。
しかし、二重屋根通気工法なら十分な通気量を、どんな屋根形状でも確実に確保することができるのです。

長持する家づくりのチェックポイント

家を長持させるために確認してください

・小屋裏の影響を受けにくくになるよう対策がされているか?
・屋根断熱の場合、きちんと通気が確保されているか?
・屋根通気が採用されている場合であっても、
 通気層が閉塞されないようになっているか?

耐震・断熱がトレンドではありますが、こだわって建てた家を長持ちさせるためにも、上記事項が守られている会社かどうかを、確認されることをおすすめします。

  • 屋根断熱を採用することで、小屋裏空間からの影響を受けにくくなる。

  • 屋根断熱であっても外壁と同じように、通気層を設けて空気を流すこと。

  • 屋根通気が採用されていても、 通気層が閉塞されないようになっているかを確認。