家づくり
2021.09.29
今さら聞けない省・創・蓄エネの違い
省エネは昔からある言葉だし何となく分かるんだけど、創エネと畜エネって違うのかしら?
例えば、太陽光発電でエネルギーを創るのは創エネで、蓄電池に電気をためると畜エネになるニャ。
どれも脱炭素社会を実現するために大切なことなんだけど、家という暮らしのうつわで、健康で快適に過ごすことを考えるなら、まず考えるべきは省エネだと思うニャ。
世界中で問題となっている異常気象の原因の一部と言われているのが地球温暖化です。
日本では国を挙げて、住宅の質を高めること、個々の家庭でのエネルギー消費量を抑えることが推進されています。
そういった中で、住宅では「省エネ」という言葉に加え、「創エネ」や「畜エネ」という言葉も聞くようになりました。
そこで今回は、省エネ・創エネ・蓄エネの違いについてご紹介したいと思います。
「省エネ」とは?
無駄にエネルギーを使わない
「省エネ」とは省エネルギーの略で、エネルギーを効率良く使用することを言います。
石油、石炭、天然ガスといった一次エネルギーは、無限ではありません。
無駄なエネルギーを使用せずに、快適な室内環境を保つためには、断熱材はもとより、窓を樹脂窓や、アルミと樹脂のハイブリット窓にしたり、扉本体内部にウレタンなどの断熱材を用いるなどして、冷気や暖気の侵入や流出を抑える工夫を施した断熱扉(ドア)などを用いて、家全体を隙間なく包むことが効果的です。
他にも住宅設備機器では、高性能な給湯器や節電効果の高いLED照明、保温性能が高い浴槽の採用などが挙げられます。
「創エネ」とは?
自らエネルギーを創り出す
「創エネ」とは創エネルギーの略称で、自治体や企業、一般住宅が自らエネルギーを創り出す考え方・方法のこと。
一般住宅で、エネルギーを生み出す創エネ設備機器と言われているのは、太陽光発電システム、そして給湯システムであるエネファ-ムです。
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを直接電力にするための「発電機」の役割をしています。
ちなみに、太陽光発電は2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度により急速に普及していきました。
「畜エネ」とは?
電気を蓄える取り組みの総称
太陽光発電を利用する創エネという言葉以外にも、近年では、「蓄エネ」という考え方も広まっています。
「蓄エネ」とは畜エネルギーの略で、電気を蓄える取り組みの総称です。
蓄エネルギーの機器としては、蓄電池が挙げられます。
蓄電池があれば、平常時は深夜電力を蓄電、日中に使用することで電力需要ピーク時の購入電力量を抑えることができます。
また、停電時(非常時)に貯めたエネルギーを使うことができるので、災害対策としても注目されています。
どれが一番大事なの?
まずは、バケツの穴を塞ぐ
それぞれ大体の特徴が分かったときに、わいてくる疑問は「限られた予算の中で、省エネ・創エネ・畜エネ、どれを一番に考えればいいの?」ということ。
そこで問題です。
穴の開いたバケツに水が注がれており、バケツの水位を上げたいのですが、あなたはどうしますか?
バケツの穴を塞ぐと多くの方がお答えになるのではないでしょうか。
家も同じです。
まずは、暖房や冷房した熱を逃がさないような家にすることが大切です。
バケツの穴とは?
断熱・気密性能や日射遮蔽・日射取得
家の場合、バケツの穴に該当するのが、断熱・気密性能や日射遮蔽・日射取得です。
せっかく暖房や冷房しても、断熱性が低い住宅は、バケツの穴から水が流れ出ているように、熱が無駄に出入りしてしまいます。
また夏場の日射を遮蔽せずに家の中に取り込んでしまい、冷房負荷が大きくなってしまったり、冬場の日射を積極的に取り込むことができない家も同じです。
水を注ぐことを例えるなら、太陽光発電で創エネをすること。
もちろん、脱炭素という視点で見れば有効な手段ではありますが、限られた予算の中で優先順位をつけるなら、まずはバケツの穴を塞ぐことが重要だと考えます。
まずは断熱性の高い住まいを実現する
健康改善効果があるとされるZEH断熱基準が一定のライン
どの程度の断熱性能が必要かという議論は様々ですが、健康に暮らすことを考えるのであれば、健康改善効果があるとされるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の断熱基準が一定のラインとなるでしょう。
※省エネ地域区分基準の6地域でUA値0.6以下
ちなみですが、「遅くとも2030年までに省エネ基準をZEH基準へ引き上げる」ことを国は検討しています。
まずは断熱性の高い住まいを実現し、エネルギーを無駄にしない。
その上で、予算のバランスに配慮しつつ、太陽光発電や蓄電池を導入するのであれば、さらなる光熱費削減効果が期待できますし、災害による停電時の備えとしても役立ちます。
電気料金の単価はずっーと上昇傾向
高い電気を買わない暮らし
電気気料金の単価って皆さん意外と気にされてませんが、実はずっーと上昇傾向にあります。
特に東日本大震災以降は顕著であり、そのことは資源エネルギー庁のホームページでも言及されています。
その大きな要因が再エネ賦課金の存在です。
太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)の電力は、国の制度で大手電力会社による買い取りが義務付けされているってご存知でしたか?
ちょっと不公平な感じもしますが、太陽光発電などを設置しているかどうかに関わらず、そのコストは「再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)」という名目で一律に電気料金に加算される形で、私たちが負担しているのです。
つまり、再エネの導入が進む中で再エネ賦課金の負担も増えており、それに従って電気料金も上昇しているというのが現状なのです。
そうなると、光熱費を抑えるには「高い電気を買わない」ことが大事になります。
世界的にはカーボンニュートラルが叫ばれていますが、ご家庭にとっても省エネ・創エネ・畜エネの重要度は、ますます高くなるでしょう。
ライフサイクルコストで検討すること
月々のお支払いを節約すると同時に、日々の生活がより豊かで便利なものになる
家を建てるときは「最初にいくらかかるか?」だけではなく、省エネ・創エネ・畜エネの光熱費削減効果に、メンテナンス費用や保険料などを含めたライフサイクルコストで考えることが大事です。
そうすることで、月々のお支払いを節約すると同時に、日々の生活がより豊かで便利なものになります。
エネルギー消費量を抑えることは、エコで家計の節約に繋がります。
住宅の質を上げて豊かで快適な暮らしを実現しましょう。
まずは、バケツの穴を塞ぐことを優先しよう。
健康改善効果があるとされるZEH断熱基準が一定のライン。
「最初にいくらかかるか?」だけではなく、ライフサイクルコストが大事。