ぼくらの家ラボ

構造・性能

2022.07.07

同じ耐震等級3でも強度が違う?

せっかく家を建てるからには、命はもちろん、ずっと住み続けられるように耐震等級は最高にしておきたいな。

それなら、許容応力度計算はしていた方がいいかもニャ。
同じ耐震等級3でも計算方法によって、強度に差が生じるのニャよ。

ハウスメーカーのCMや、総合住宅展示場の看板やチラシなどで「耐震等級3」というPRをよく目にするようになりました。
というのも、耐震等級3が現在は最高の等級となっています。
でも、同じ耐震等級3でも計算方法によって強度が違うという話をご存じでしょうか?

そこで今回は、構造計算についてご紹介したいと思います。

耐震等級とは?

耐震性能を示す指標の一つ

耐震等級とは、品確法(住宅品質確保促進法)に基づき制定された地震に対する建物の強度を示す指標の一つです。 現在は、耐震性能によって3段階に分かれており、数字が大きければ大きいほど、建物の耐震性が高いことを表しています。

強度の検討方法は?

3つの計算方法がある

耐震性能の強度を検討するのですが、その方法は下記の3つが存在します。
普段はあまり聞かない言葉だと思いますので、次項から解説していきます。

1:仕様規定による建築確認
2:性能表示計算による建築確認
3:許容力度計算による建築確認

1:仕様規定による簡易的すぎる壁量計算

建築基準法で定められている最も一般的な計算方法

建築基準法では、一般的な木造2階建て以下の住宅は「四号建築物」に該当し、構造計算の提出を必要としません。
構造計算の提出は必要とはしませんが、設計者は計算をする必要があります。
耐震性能を維持するために各部構造の仕様が規定されており、それが「仕様規定」です。
仕様規定の中には、建築基準法で定められている最も一般的な計算方法が「壁量計算」です。

多くの会社が採用しており、地震や台風など横の力(水平力)によって建物が壊れないかを壁の量だけで検証する簡易的な計算方法です。
ちなみに、耐震等級2以上を取得する場合「仕様規定による計算」では設計が出来ません。

2:ほぼ壁量計算と変わらない性能表示計算

大半の木造住宅はこの計算方法で耐震等級3を算出している

性能表示計算とは、壁量計算に加えて「床・屋根倍率の確認」と「床倍率に応じた横架材接合部の倍率」を検証する計算方法です。
許容応力度計算に必要となる、屋根材や壁材、仕上げの重さや、天井下地、壁下地、床下地、壁仕上げ、床仕上げなど細かく設定する必要がありません。

長期優良住宅を建てる際、耐震等級は2以上である必要があるため、大半の木造住宅はこの計算方法で耐震等級3を算出していると言われています。

費用を抑えることができ、時間の短縮になるため、性能表示計算で設計している会社が多いです。

3:部材にかかる力まで考慮する許容応力度計算

A4用紙で250~300枚にもなる

許容力度計算とは、柱の一本・梁の一本・基礎に至るまですべての部材にかかる力まで計算していく非常に緻密な方法です。

よほど専門的に行っていない限り、住宅業界に従事している人間でもその中身を十分理解できている人はほとんどいないと言われています。
計算資料は壁量計算がA3用紙1枚ですむのに対して、許容応力度計算の場合はA4用紙で250~300枚にもなるほどです。

計算方法まとめ

計算の違いで検討項目も異なる

計算方法の違いと検討項目を下表にまとめました。

耐震等級2以上を取得するためには、「性能表示計算」または「許容応力度計算」を行う必要がありますが、下表のとおり検討項目が異なります。
性能表示計算はチェック項目に沿って耐震設計を行う事で、許容応力度計算でするような細かな計算や検討を省略できます。

同じ耐震等級でも

許容応力度計算の方が多くの耐力壁を必要とする

性能表示計算で建てた耐震等級3が、許容応力度計算と同じ量の耐力壁が必要になるかというと、実際は違います。

一般的に簡易計算であれば、安全側を確保するため強度は増すはずなのですが、耐震等級においては、より詳細な計算を行う許容応力度計算の方が、強度が高くなるという不思議な現象が発生します。

耐震等級3で同じような家を設計した場合、許容応力度計算の方が多くの耐力壁を必要とする計算結果となるのです。
許容応力度計算による耐震等級2の方が、場合によっては性能表示計算による耐震等級3より強度が高くなる逆転現象すら発生します。

耐震等級3は必須

南海トラフ巨大地震に備えよう

日本建築学会の熊本地震の調査結果によると、耐震等級2の住宅ですら全壊と半壊が確認された一方で、耐震等級3の家は無被害か軽微な損害ですみ、その後も住み続けることができました。
この耐震等級3には性能表示計算による耐震等級3も許容応力度計算による耐震等級3も含まれます。
計算方法で違いはあるものの、少なくとも耐震等級3はマストだと考えます。

震度7の地震が立て続けに2回発生したこと、また一連の地震で震度6弱以上の地震が7回も発生していることは、熊本地震が観測史上初とされています。
さらに大きな被害があると想定されている南海トラフ巨大地震では、それ以上に安全性の高い備えが必要かもしれません。

お家づくりをご検討される場合は、ご家族の命と財産を守るために構造計算についても、ぜひご検討ください。

  • 耐震等級2以上を取得するためには、「性能表示計算」か「許容応力度計算」をする

  • 大半の木造住宅は性能表示計算で耐震等級3を算出している

  • 許容応力度計算の方が、同じ耐震等級でも強度が高くなる