ぼくらの家ラボ

構造・性能

2022.12.10

ややこしい!断熱性能等級を解説

新たに断熱性能等級が追加されたって聞いたんだけど、他にもZEHやHEAT20 とかもあって何がなんだか分からないなぁ…。

ZEHレベルの断熱性能が等級「5」として、HEAT20レベルの断熱性能が「6」「7」として新たに追加されたのニャ。ちなみに、等級4は2025年に適合義務化予定であり、長期優良住宅にするには等級5をクリアする必要があるニャ。

日本の住宅性能が海外と比べ低かった理由のひとつに、国による制度面の強化の遅れがありましたが、現在は国を挙げて住宅高性能化への取り組みが急激に進みつつあります。

断熱性能等級が新設され、2025年には新築住宅に対し省エネ基準適合が義務化予定されていますが、断熱や省エネに関する基準が多すぎて「何が何だか分からない」というのが、本音のところではないでしょうか?

そこで今回は、断熱や省エネの基準についてご紹介したいと思います。

断熱性能等級とは?

ついに国も動いた

断熱性能等級とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)に規定された省エネ性能を表す等級のことを示したものであり、国土交通省が制定しました。断熱だけに限らず、断熱以外の性能も含めた「省エネ性能」を表しているため、「断熱等性能等級」とも呼ばれています。

これまで断熱等性能等級は「4」が最高の等級でしたが、「5・6・7」の等級が追加されることとなりました。住宅の省エネ政策はこれまでに何度も更新されておりましたが、等級追加はなんと23年ぶりだそうです。

断熱レベル一覧

HEAT20レベルが公的な基準へ

断熱基準に関しては前々からの国の基準や民間が定めた基準があり、今回の等級追加によりさらに複雑になったかと思います。そこで、断熱グレードを一覧にしましたので、ご参考にしてください。

ちなみにHEAT20とは、住宅・建材生産者団体の有志によって発足した団体である「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」のことです。HAET20も断熱性能に関する基準を「G1・G2 ・G3」の断熱グレードとして制定していましたが、それが今回は公的な断熱等級として法制化されました。

2025年には等級4が適合義務化

等級3以下は既存不適格建築物となるため注意

等級が1から7までの7段階になったのですが、2025年4月以降はすべての新築住宅に等級4が義務づけられています。つまり、新築住宅に関しては、等級5が新設される前までは最高水準だった等級4が一気に最低水準になってしまいます。

そのため、断熱性能等級3は注意が必要です。等級4が義務化されると、断熱性能等級3までしか対応していない建物は『既存不適格建築物』になる可能性が極めて高いため、住宅を購入される際には注意が必要です。

どのレベルの断熱性能があればいいか?

断熱等級5であれば安心

断熱性能が高い家で暮らすことで、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせますし、高騰している光熱費を抑える節効果も期待できます。ただ、断熱性能は上を見ればキリがないという声もあり、高すぎる水準を求めればそれなりのコストも必要です。

では、どのレベルの断熱性能があればいいのか?後述する理由から断熱等級5以上であれば安心だと考えます。

断熱等級5であれば…

健康改善効果が得られる

家の断熱性能を上げることで、ヒートショックだけではなく、喘息やアトピーなどを改善する効果があることが、近畿大学岩前教授の調査によってわかっています。
下図は、断熱性能によって改善された症状のグラフですが、ZEH断熱基準相当、つまり断熱等級5で急激に改善された結果があります。

断熱等級5であれば…

既存不適格建築物にならない

二つ目の理由ですが、2025年には等級4が新築住宅の最低限の基準となりますが、2030年にはZEH断熱水準である等級5が最低限となる予定があります。等級5を満たしていれば予定されている基準はクリアとなるため、繰り返しにはなりますが、既存不適格建築物になる可能性が極めて低いです。

断熱等級5なら…

長期優良住宅の基準引き上げに対応

長期優良住宅の認定基準が引き上げられ、断熱等級5が要件化されましたが、等級5であればその基準も満たすことができますので、住宅ローンや固定資産税で税制上で金銭的なメリットが得られます。

家族と健康で快適な暮らしのため

目安はZEH水準である断熱等級5

脱炭素化社会に向け国が動いていますが、国土交通省によると、既存住宅の30%が無断熱の家という調査結果(2018年)も出ています。また、昨今は電力需要がひっ迫し、電気代やガス代の高騰が進んでおり、寒い日でも満足に暖房できない家が増えてしまうかもしれません。

家族の健康で快適な暮らしを守るためにも、ZEH水準である断熱等級5以上の家づくりをぜひご検討ください。

  • 断熱性能等級とは、省エネ性能を表す

  • 等級3以下は既存不適格建築物となる

  • ZEH水準である断熱等級5を目安にしてみて