ぼくらの家ラボ

構造・性能

2022.08.22

徹底解説!外壁通気工法

木の乾燥状態を保ち、家を長持ちさせるために「外壁通気工法」っていうのがあるんだね。

実は外壁通気工法の中でも、外壁の取り付け方によって違いがあるのニャ。
この違いが耐久性に大きく影響するので、知っておいた方がいいと思うニャ。

家の耐震性や断熱性にも影響する、家を長持ちさせるための耐久性。耐久性を向上させるひとつの方法として、「通気」という仕組みがあります。そして、壁の通気を確保する方法として、外壁通気工法が採用されていることが一般的です。

でも、その外壁通気工法の中にも種類があるってご存知でしょうか?
外壁の取り付け方が異なる3パターンが存在します。

今回は、外壁通気工法について徹底的にご紹介したいと思います。

外壁通気工法とは?

壁内の湿気を外部へ逃がす

外壁通気工法とは、木造住宅の外壁において、サイディングなどの外装材と下地の間に連続した通気層を設ける構造方式のことです。北海道などの寒冷地で、壁内結露による凍害が多発。その対策として、壁内の湿気を外部へ逃がす通路として通気層を設けたのが、通気工法の始まりとされています。

この工法のメリットは、壁体内結露を防止し、建物の耐久性を向上させることです。窯業系サイディングを使用した外壁の基本的な構成として、外壁通気工法を日本窯業外装材協会では製品保証条件としています。

サイディングの取り付け方に違い

3パターンある

外壁通気工法によるサイディングの取付には、釘止め工法と金具止め工法の2種類の方法があります。少し混乱しますが、金具止め工法の中には、通気金具止めと、非通気の金具の2つに分かれており、合計で下記の3パターンが存在します。

1:釘止め工法
2:非通気金具止め工法
3:通気金具止め工法

1:釘止め工法

外壁を釘で胴縁に直接固定する工法

「釘打ち工法」は、外壁の下地の部分にあたる胴縁(どうぶち)と呼ばれる下地に、釘で直接固定する工法です。厚さが14mm以下のサイディングにこの工法は使われていますが、窯業系サイディングのJIS規格が2008年に変更され、最低14㎜以上となり、現在は14㎜のみがこの工法です。

金具止め工法に比べて使うサイディングが薄いため、材料費や工事費が安くなるのがメリット。ただ、直接釘を打つことでひび割れのリスクが生じます。また、乾燥や気温の変化によりサイディングは伸縮することがありますが、固定されることで伸縮ができず、サイディングが反ってしまう可能性があります。反るとその隙間から雨水が侵入しやすくなってしまいます。

ガッチリと釘で固定するため、地震発生時に力が分散されず、釘を打った部分からひび割れしたり、すでにあったひび割れが広がるリスクがあります。

2:非通気金具止め工法

厚さ数ミリ程度の金具で胴縁にとめる工法

サイディングの厚みが15㎜以上の場合、釘ではなく「金具」でとめるのが一般的です。「非通気金具止め工法」は、サイディングを厚さ数ミリ程度の金具で胴縁に留める工法で、現在において最も採用が多いです。

金具に引っ掛けるため、釘止め工法に比べてある程度「逃げ」と呼ばれる余裕があり、力が分散され、破損の防止になります。ただ、胴縁が適切に配置されていないと、湿気や雨水が滞留してしまう危険性があります。胴縁が腐ってしまった場合、最悪サイディングの脱落も考えられます。

何より、胴縁は外壁材で見えないため、腐っていても発見が難しいです。

3:通気金具止め工法

通気が確保しやすい優れた工法

非通気金具止め工法の場合は、金具の厚さが数ミリ程度であるため、胴縁を使って通気層を作らないといけません。しかし、「通気金具止め工法」の場合、金具の厚みが15mmもあるため、胴縁を使わなくても通気を確保できるのが特徴です。基本的に胴縁を使用しませんので、上下左右と通気が確保しやすい利点があります。胴縁そのものがないので、胴縁が腐朽する心配もありません。さらに、非通気金具留工法と同様、地震に対しても対応力があります。
木の胴縁がなく通気が確実に取れること、そして地震に対する対応力が良いという理由から、「通気金具工法」は優れています。

ただ、15㎜の金具は数ミリの金具と比べて高く、取り付けに手間がかかるため、非通気金具止め工法よりもコストが必要です。胴縁がないため、通気金具止め工法の方が一見して安くなりそうですが、特に枠組壁工法においては、上下階で打ち付ける柱の位置が変わり、調整が必要になってしまうからです。

各工法のまとめ

おすすめは「通気金具止め工法」を用いた外壁通気工法

長くなってしまいましたが、各工法による違いをカンタンに下表にまとめました。
胴縁の腐朽リスクと通気の確実性、地震への対応力を考えると、コストはかかりますが、おすすめは「通気金具止め工法」を用いた外壁通気工法です。

なぜ外壁通気工法が必要なのか?

塗り壁でも、通気層が劣化軽減に必要

外壁通気工法は、当初結露対策として採用されましたが、結果的に通気層が侵入薄の排出経路として機能し、浸水事故の軽減に役立つことが判明しました。そして今では、サイディングなどの乾式外装の標準工法として定着しました。乾式外装仕上げの場合、住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準にも採用が規定されています。

ただ、「通気層が外壁の劣化軽減に必要であることは、ラスモルタル塗りなど湿式の外装でも同様です。しかし、工事費が増えるため、湿式外装では通気工法の採用は遅れているのが現状」というのが識者による見解です。

「いつまでも」そうであるように

耐久性のことを考えよう

どんなにオシャレなお家でも、断熱性に優れたお家でも、「いつまでも」そうでなければ意味がありません。 家をご建築される際は、耐久性についても検討されてください。

  • 外壁通気工法とは外装材と下地の間に連続した通気層を設ける構造方式のこと

  • 外壁通気工法にも、外壁の取り付け方で耐久性に大きく影響する

  • おすすめは「通気金具止め工法」を用いた外壁通気工法