#セミナー | 2022.9.29
松尾先生に聞く!太陽光発電のウソ・ホント
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株式会社松尾設計室一級建築士事務所 代表取締役 室長
松尾 和也 氏
プロフィール
一級建築士。2005年「サスティナブル住宅賞」受賞。設計活動の傍ら、「日経アーキテクチュア」「日経ホームビルダー」「建築知識」「新建ハウジング」等の専門誌への執筆活動や「断熱」「省エネ」に関する講演も行っており、受講した設計事務所、工務店等は延べ6000社以上。2020年に開設したYouTubeチャンネルの登録者数は2022年10月現在、6万人を超える。2022年10月には、他の有識者とともに東京都庁と太陽光発電について議論した動画を公開。) ※プロフィールは2022年時点のものです。
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株式会社松尾設計室一級建築士事務所 代表取締役 室長
松尾 和也 氏
一級建築士。2005年「サスティナブル住宅賞」受賞。設計活動の傍ら、「日経アーキテクチュア」「日経ホームビルダー」「建築知識」「新建ハウジング」等の専門誌への執筆活動や「断熱」「省エネ」に関する講演も行っており、受講した設計事務所、工務店等は延べ6000社以上。2020年に開設したYouTubeチャンネルの登録者数は2022年10月現在、6万人を超える。2022年10月には、他の有識者とともに東京都庁と太陽光発電について議論した動画を公開。) ※プロフィールは2022年時点のものです。
東京都の太陽光発電設置義務化に向けた動きや電気代の高騰などもあって、いっそう注目を集める太陽光発電。
メディアやネットではさまざまな意見が飛び交い、「太陽光発電って、本当におトクなの?」と悩んでしまう人も少なくないのでは?
今回は、建築業界誌でも特集号が発行されるなど、その設計術をはじめとする知見に注目が集まる松尾設計室・松尾和也先生による特別教室を開催!太陽光発電の必要性についても広く発信されている先生に、太陽光発電にまつわる情報の「ウソ・ホント」を教えていただきました。
※こちらのインタビューは2022年9月29日に行われたものです。

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目次
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Q . なぜ今、太陽光発電が注目を集めているのでしょうか?
A . 「CO2削減効果」、そして「電気代の高騰」が要因です。

泉北ホーム
東京都が太陽光発電の設置義務化について2025年4月の施行を目指すなど、最近太陽光発電が非常に注目を集めています。こうした状況になった要因を、先生はどう見られていますか?

松尾先生
まずCO2削減の必要性については、以前から言われています。「2050年にはCO2排出量をゼロにする」というパリ協定の目標には、197の国と地域が締結・参加しています。それとは別に、皆さんの身近なところで言えば、電気代の高騰があります。日本ではこの1年で2割程度の値上げで済んでいますが、イギリスでは8割の値上げとなっています。オランダではガス代との合算ではありますが、「ひと月で3倍になった」という話も耳にしました。

泉北ホーム
なぜこんなにも電気代が高騰しているのでしょうか?

松尾先生
最も大きな要因としては、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が挙げられます。ロシアが欧州へのガス供給をストップしたことで、ガスの価格が高騰しました。関西電力の火力発電(石油・石炭・ガス)においても、ガスが44%を占めていたので、その影響を被ることになったんです。もちろん戦争が終われば状況が改善する可能性はありますが、今後どうなるかは誰にもわかりません。
もうひとつは、円安です。日本は石油・石炭・ガスなどのエネルギーをすべて輸入しているため、円安の影響が非常に大きいんです。とはいえ、ガスの価格高騰は欧州に比べてまだ緩やかなので、本当に影響が現れるのはこれからではないかと考えています。 東京都の太陽光発電の設置義務化については、反対意見もありますが、義務化は間違いなくやるべきだと考えています。
Q . 太陽光発電は搭載すべきなんでしょうか?
A . これからは「経済的に余裕のないご家庭」ほど搭載しておくべきです。


泉北ホーム
やはり、太陽光発電は搭載しておくべきなんですね。

松尾先生
これまでは「経済的に余裕のあるご家庭は、太陽光発電を搭載するといい」という認識だったかもしれませんが、今はむしろ「経済的に余裕のないご家庭ほど、太陽光発電を搭載しておくべき」という状況です。先ほどからお話してきたようなインフレの被害を免れるための手段であり、「つけているとトクをする」ではなく「つけていないと大損をする」のが太陽光発電だと言えます。
ガソリンの価格も上昇し続けていますが、ガソリンを買いだめしておくことは現実的に不可能です。しかし、電力については太陽光発電を搭載することで、将来の発電量を先買いするのに等しい恩恵が得られるんです。
Q . 泉北ホームの太陽光発電の価格は、他社に比べて安い方と言えるでしょうか?
A . 泉北ホームさんの価格は、最大限努力されている価格だと思います。

泉北ホーム
太陽光発電の価格は、以前に比べて安くなってきていると聞きますが、一般的にはいくらぐらいかかるものでしょうか?

松尾先生
比較的お客様のために努力されている工務店さんなら施工費込で1kWあたり25万円程度だと思います。利益を重視される会社なら1kWあたり30~35万円でもおかしくありません。泉北ホームさんの価格はそのどちらよりも安いです。この価格なら搭載しない理由がないですよ。

泉北ホーム
ありがとうございます。ちなみにリースやPPA※を利用しての導入にもメリットはあるでしょうか?
※「Power Purchase Agreement(電力販売契約)」の略。PPA事業者と呼ばれる第三者が所有する太陽光発電システムを一般家庭が 屋根などのスペースを貸与して設置するモデル。家庭で自家消費した分だけPPA事業者に電気代を支払う。

松尾先生
どうしても費用を捻出できないのであれば、リースを検討してもいいと思います。リースとPPAのどちらがトクかは、会社によって異なるので何とも言えません。ただベストなのは、間違いなく買い取りです。泉北ホームさんの価格ならなおさらです。
Q . 太陽光発電の費用は、何年後に回収できるものでしょうか?
A . 一般的には約10年ですが、泉北ホームさんならもっと早いです。


泉北ホーム
太陽光発電の導入費用は、およそ何年後に回収できるのでしょうか? ネットでは「元を取れない」という意見も見られますが……。

松尾先生
「元が取れない」というのは、「FIT制度※の買取価格が下がっている」という印象だけで語られている意見だと思います。買取価格の低下は、設置費用の低下などのバランスを見て国が定めています。何より、これだけ電気代が高騰してくると、売電よりも自家消費率を上げる方が利益につながります。現在は1kW売電しても約17円ですが、昼間に自家消費すれば約37円の節約になりますから。
※再生可能エネルギーの固定価格買取制度。再生可能エネルギーによって発電された電気を一定期間・一定価格で電力会社が買い取ることを国が保証している。
太陽光発電について、初期の搭載費用以外にかかるのはパワコンの交換費用です。太陽光パネルそのものは30~35年程度もちますが、パワコンの耐用年数は15~20年程度なので、1度は交換する必要があります。その他のメンテナンスは実質必要ありません。万一故障があれば発電量があきらかに低下するので、そこで気づくかと思います。その場合も、保証期間内なら無償で修理してもらえるはずです。

泉北ホーム
そうですね。泉北ホームでもパワコンについては15年の保証があります。

松尾先生
一般的な価格で太陽光発電を搭載した場合、約10年で費用を回収できるのですが、泉北ホームさんで3.4kWの太陽光発電を搭載した場合、およそ8年で回収できることになります。
これはつまり、15年の保証期間の内にプラスになるということです。計算すると、太陽光発電搭載後20年での利益は100万円近くになります。もう少し搭載量を増やして、6.8kWの太陽光発電を搭載した場合を計算してみましょう。自家消費割合は30%としておきます。そうすると、回収にかかる年数は長くなりますが、20年での利益はさらに増えます。これだけの利益が出るのであれば、パワコン1台で担える上限の容量まで搭載するのが良いと思います。詳しい計算方法については、私のYouTubeチャンネルで紹介しています。
※今回の計算では、関西電力「はぴeタイムR」のデイタイム・リビングタイム・ナイトタイムの料金にそれぞれ2022年10月時点の燃料費調整額を加えて1kWhあたりの電気料金を算出。
Q . 太陽光発電の搭載をおすすめしない条件があれば教えてください。
A . マンションの影などもほぼ影響ありません。 ただ中古住宅への搭載はおすすめしません。


泉北ホーム
お客様の中には、日照などの条件が良くないからと太陽光発電の搭載を躊躇される方もいると思います。松尾先生から見て「この条件ではさすがにメリットが少ない」という例はありますか?

松尾先生
専用のシミュレーションソフトで計算してみるとわかるのですが、周囲にマンションが建っているケースでもほとんど影響はありません。ひと昔前は電柱の影がかかるだけで一気に発電量が落ちるといったケースもあったようですが、最近の太陽光発電は性能が上がっているので、そのようなことはなくなりました。
強いて言えば、中古住宅に搭載するのは構造的に弱くなるのでおすすめしません。本来であれば屋根を軽くして構造を強化すべきところを、太陽光発電の搭載によって家に荷重をかけるという真逆のことをやってしまうことになるので。
Q . 太陽光発電を搭載するなら、許容応力度計算は必須ですか?
A . 2階建てでも3階建てでも、やっておくべきだと思います。


泉北ホーム
やはり太陽光発電の荷重は考慮する必要がありますね。ちなみに構造で言うと、許容応力度計算は必須と考えた方が良いでしょうか。

松尾先生
やっておくべきだと思います。3階建てでは許容応力度計算は必ず行わなければなりませんが、泉北ホームさんは2階建てでも許容応力度計算を実施されていますよね。太陽光発電1kWあたり60kg程度の重量がありますが、構造計算事務所に計算を依頼する際にその重量も伝えていれば、安全性はまったく心配ありません。 泉北ホームさんは、太陽光発電の徹底した安さと、構造の安全性についてお客様にどんどんアピールされるべきだと思います。


太陽光発電について東京都にも進言されている松尾先生のお話は非常にわかりやすく、専門的な施工のお話についてもいろいろとご教授いただくことができました。
今後も泉北ホームでは、松尾先生から「これからの暮らし」を追求するヒントをいただきながら、時代の変化に合った住まいづくりに取り組んでいきます。コスト面や性能面でお客様に貢献するのはもちろん、家づくりを担う会社として環境負荷の軽減にも力を注いでいきます。どうぞご期待ください。